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小さな痛み

私は、このひとの吸う雨の日の煙草が好きだった。

煙草を持ったときの手の甲の感じが、そのしずかさが好きだった。

 江國香織

そんな小雨が降っていた。

私の手は。

誰に見られることもなく。

窓の隙間と唇の間を行ったり来たりしているだけだった。

煙草を挟んだこの指が、かつては白く繊細な指に絡まっていたことを思いだし。

少しだけ悲しくなった。